日系企業がアメリカで人を採れない理由|職務定義の4つの必須項目
08.22.2026 | カテゴリー, アメリカ生活ガイド

結論:アメリカで人が辞めるのは「やる気」の問題ではなく、職務定義の設計不足です
アメリカに進出した日系企業から、もっとも多く聞こえてくる悩みが「人が採れない」「採ってもすぐ辞めてしまう」というものです。
そして、その理由を語るときに必ずと言っていいほど出てくるのが、「やる気のある社員がいない」「モチベーションの高い人材が見つからない」という言葉です。
ただ、現地で20年以上事業を続けてきた立場から申し上げると、この見立ては原因と結果を取り違えている可能性が高いと考えています。
人が定着しないのは、やる気のある人材がいないからではなく、その人を評価できる職務定義が用意されていないからです。
本記事では、日系企業がアメリカの雇用でつまずく構造を、「職務定義」という一点から整理し直します。
あわせて、同じ根を持つもう一つの盲点である競合分析の甘さについても取り上げます。
【動画版】
なぜ「やる気のある社員がいない」と感じてしまうのか
日本で高く評価されていたのは「エクストラ」の部分でした
日本企業で言うところの「やる気のある社員」とは、多くの場合、決められた仕事の外側まで手を伸ばしてくれる人を指しています。
頼まれていない資料を用意する、周囲の手が回らない業務を引き取る、遅い時間まで残って全体を見る。
こうした振る舞いが評価につながりやすい環境です。
裏を返せば、任された範囲をきちんと満たしている人の評価は、平均的なところで頭打ちになりやすいということでもあります。
私自身、2004年に渡米するまでの2年間を日本の企業で過ごしましたが、当時を思い返すと、自分の担当がどこまでなのかという線引きは、ほとんど示されていませんでした。
とにかく遅くまで働き、さまざまな人のサポートに回り、自分で仕事を見つけていく。
その姿勢自体が評価される空気があったように思います。
アメリカでは「決められたことを確実にやる人」が評価されます
一方、現地の企業では、個人が担う役割と責任の範囲があらかじめ定義されているのが通例です。
そして働く側には、その範囲のなかで高い成果を出すことが求められます。
範囲外まで踏み込む「エクストラ」な働き方が前提に置かれることは、多くありません。
任された内容を安定して仕上げられる人こそ高く評価される、という価値観です。
この前提の違いを踏まえずに日本と同じ感覚で組織をつくると、「指示した以上のことをしてくれない」という不満が生まれます。
しかし現地の感覚では、指示された範囲を完遂している時点で、その人は十分に仕事をしています。
職務内容が曖昧なまま採用すると、何が起きるのか

ここからは、職務定義の不足が現場でどのような連鎖を引き起こすのかを、順番に分解してみます。
評価できない、だから報われない、だから辞める
現地の求人は、担当する職務ごとに給与レンジを添えて出すのが通例です。
ところが、この職務内容を言語化しきれないまま採用に踏み切る日本企業は少なくありません。
職務内容が曖昧なままだと、最初に失われるのは評価の基準です。
何をどこまで満たせば高く評価されるのかを、会社の側が言葉にできなくなります。
基準を欠いた組織では、働きぶりを公平に測ることができません。
測れないものは、当然ながら処遇にも反映されません。
その状態が続くと、働く側は手応えを失っていきます。
努力が処遇に返ってこないと分かった人は、表立って不満を述べないまま、次の職場を探し始めます。
定着率の低下は、採用コストに跳ね返ってきます
この連鎖の行き着く先が、定着率の低下です。
人が抜ければ再び募集をかけることになりますが、職務定義が曖昧なままであれば、次に採用した人も同じ理由で離れていきます。
採用と離職を繰り返すあいだ、募集にかかる費用も、教育に投じた時間も回収できません。
さらに、残ったメンバーには欠員分の負荷がかかります。
その負荷が新たな離職を招くこともあります。
つまり、職務定義の不足は採用の問題にとどまらず、事業の成長そのものを削っていく構造的な課題になります。
「仕組みで勝つ」組織をどう設計するか
リーダーとメンバーで、属人性の扱いを分けて考えます
では、どう手を打てばよいのでしょうか。
私たちが重視しているのは、属人的な要素をどこに残し、どこから外すかを意図的に決めることです。
リーダーと呼ばれる立場の人には、ある程度その人固有の判断力や経験が求められる場面があります。
ここは属人性が残っても構わない領域です。
一方、それ以外のポジションについては、個人に紐づく要素を可能な限り削ぎ落とす方針を取っています。
特定の誰かがいなければ回らない状態を減らし、定められた手順を踏めば成果に届く形へ整えていく。
仕組みで勝てる設計に寄せていく、という考え方です。

「エクストラで働く人」に依存することのリスク
もちろん、アメリカにも範囲を越えて働くタイプの人材は存在します。
ただ、そうした人材は採用時のコストが高く、代わりを見つけるのが難しいという現実があります。
その人が辞めた瞬間に業務が止まってしまうようであれば、それは組織として脆い状態です。
同じ水準の人を探し直すのは簡単ではありません。
優秀な個人に支えてもらう設計は、短期的には機能しても、長く続ける前提の事業には向いていないと考えています。
職務定義に最低限書いておきたいこと
では、職務定義には何を書けばよいのでしょうか。
細かな体裁よりも、次の4点が埋まっているかどうかが実務では効いてきます。
1つ目は、担当する業務の範囲です。
日々の業務として何を行うのかを、動詞で書き出していきます。
「サポートする」「調整する」といった曖昧な表現は、後で評価する段になって必ず解釈が割れます。
2つ目は、その職務における成果の定義です。
何がどうなっていれば良い仕事をしたことになるのかを、可能な範囲で具体的に示します。
数値で表せる職務であれば数値を、そうでなければ完了の状態を言葉で定めます。
3つ目は、判断してよい範囲と、上長の確認が必要な範囲の線引きです。
ここが曖昧だと、勝手に進めたと責められるか、指示待ちだと評価されるかのどちらかに転びやすくなります。
4つ目は、他のポジションとの境界です。
誰の仕事でもない業務が残っていると、結局は気の利く誰かが拾うことになり、属人化が静かに戻ってきます。
最初から完璧な文書を目指す必要はありません。
運用しながら抜けを見つけて書き足していく方が、現実的に機能します。
大切なのは、採用の前に「この人に何を任せ、何をもって評価するのか」を会社の側が言語化しておくことです。
ここが決まっていれば、給与レンジの設定も、面接で確認すべき点も、自然と定まってきます。
もう一つの盲点:競合の「巨人」から目をそらしていないか
気づくと、勝てそうな相手ばかり見ています
雇用の話から少し離れますが、日系企業がアメリカでつまずくもう一つの理由として、競合分析の甘さがあります。
根っこは同じで、現実を直視できているかどうかという問題です。
これは私たち自身の失敗談でもあります。
市場を押さえている巨大企業からはどこかで目をそらし、自分たちでも張り合えそうな相手ばかりを追いかけていた時期がありました。
しかし、小さな競合は次から次へと現れます。
そこへの対策だけを積み重ねていくと、終わりの見えないコスト競争に入り込むことになります。
強みと弱みを棚卸しして、差別化の起点を見つけます
本来向き合うべきなのは、自分たちよりはるかに大きな相手をどう攻略するか、という問いです。
なぜあの会社にこれだけ顧客が集まるのか。
現地の消費者は、その会社のどこに価値を感じているのか。
ここを感情抜きで読み解く作業が要ります。
そのうえで、劣っている領域と優位に立てている領域を仕分けます。
前者は何で埋めるのか、後者はどこまで伸ばせるのか。
相手が持っていない自社の資産と、相手にあって自社に欠けている要素。
この2つを書き出していくと、差別化の起点が浮かび上がってきます。
現実を直視することは気持ちのいい作業ではありませんが、ここを避けたまま立てた戦略は、たいてい機能しません。
日本人が誤解しやすい3つのポイント

ここまでの内容を、現地で誤解が起きやすい順に整理し直します。
1つ目は、「やる気がない」と「やる気を測る物差しがない」を混同してしまうことです。
評価の基準が用意されていなければ、意欲の有無は判定のしようがありません。
2つ目は、職務範囲を限定することを冷たい管理だと捉えてしまうことです。
実際には、範囲が明確であるほど働く側は成果を出しやすく、正当に評価されやすくなります。
3つ目は、優秀な個人を採用すれば組織の課題が解決すると考えてしまうことです。
個人の力量に依存した状態は、その人の退職と同時に失われます。
進出・赴任のタイミングで「車」をどうするか
組織づくりと並行して、社用車や駐在員の足をどう用意するかという実務も動き出します。
法人として新車をまとめて確保したい場合は、3年契約のBizカーリースが選択肢になります。
赴任したばかりでクレジットヒストリーがまだ積み上がっていない方には、解約の自由度が高いフレックスリースという形もあります。
契約条件や取り扱い車種は変わることがありますので、最新の内容は各サービスページでご確認ください。
まとめ:まず「職務定義」から着手する

アメリカでの雇用がうまくいかないとき、原因を人材の質やモチベーションに求めたくなるのは自然なことです。
ただ、そこに手を入れる前に確認していただきたいのが、職務内容がどこまで言語化されているか、という点です。
職務内容を明確にすれば評価の基準が立ちます。
基準が立てば公平に評価でき、評価されるからこそ人は残ります。
定着した人材が積み上げる経験は、そのまま組織の力になっていきます。
そして職務定義は、一度書いて終わりにするものではありません。
事業の段階が変われば必要な役割も変わりますので、少なくとも年に一度は実態と合っているかを見直しておくと、現場との認識のずれが小さいうちに手を打てます。
これからアメリカ進出を検討されている企業の方、すでに現地で奮闘されているリーダーの方にとって、この整理が何かのヒントになれば幸いです。
文化の違いは、正しく理解して設計に落とし込めば、必ず乗り越えられるものだと考えています。
情報確認について
本記事は2026年7月確認時点の内容で、雇用慣行についてはエコドライブの現地での経験を主な拠り所として作成しています。記事内で触れているサービスの契約条件・料金・取り扱い車種は変更される可能性がありますので、ご利用前に各サービスページでご確認ください。
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