アメリカの富裕層はなぜ借金をするのか|良い借金と悪い借金を分ける4つの視点

09.29.2026 | カテゴリー, アメリカ生活ガイド

アメリカで暮らし始めた日本人の方が、早い段階で戸惑うテーマのひとつが「借金」です。

日本では、住宅ローン以外の借り入れはできるだけ避けるもの、という感覚を持っている方が多いと思います。

ところが私がこちらで接してきた資産家の方には、必要に応じてかなり大きな金額を借りている人がいます。

この違いは、どちらが正しいという話ではありません。

お金を「貯めて備えるもの」と見るか、「資産に置き換えるもの」と見るかで、最初の一歩が変わってくるためです。

この記事では、借り入れを資産の購入や資金調達に使う考え方を、実際の仕組みと注意点に沿って整理していきます。

結論:借り入れには、時期を早める使い方と、売らずに資金を作る使い方があります

先に結論をお伝えします。

借り入れを使う目的は、大きく2つあります。

ひとつは、自己資金だけで買うより早く資産を手に入れることです。

もうひとつは、持っている資産を売らずに、必要な資金を用意することです。

もっとも、買った後に必ず値上がりするわけではありません。

購入資金をすべて貯めてから買うのか、自己資金に借り入れを組み合わせて買うのか。

この違いで、買える時期が変わります。

借り入れを返済の負担としてだけ見るのではなく、資産の購入や資金調達の手段としても捉える、という考え方です。

とはいえ、誰がどんな条件で借りても同じ結果になるわけではありません。

どのように活用できるかは、借入条件や返済能力によって変わります。

ここからは、確認しておきたい点を4つの視点に分けて見ていきます。


視点1:手元に残す現金と、資産に回す資金を分けて考える

資産家というと、銀行口座に大きな残高がある姿を思い浮かべるかもしれません。

ところが私が接してきた方の中には、手元に現金を厚く持つことより、不動産や株式で資産を持つことを優先している方がいます。

現金を厚く持っておくほうが安心だと考えている方には、意外に映るかもしれません。

現金を不動産や株式に置き換えれば、その分だけ手元の現金は減ります。

手元に残す金額と、資産に回す金額をどこで線引きするか。

そこが最初の分かれ目になります。

モノポリーで考える、資産を持つ意味

この感覚を説明するのに、モノポリーというボードゲームがよく引き合いに出されます。

アメリカの家庭で広く遊ばれている、最終的に一番豊かになった人が勝つゲームです。

このゲームでは、給料をもらって手元に残していくだけでは勝てません。

土地を買わずにいると、他のプレイヤーの物件に止まるたびに賃料を支払うことになり、現金がじりじり減っていきます。

逆に早く物件を押さえた人は、他人が止まるたびに収入を得ます。

盤面の土地は数が決まっているので、動き出しが遅いほど、買える物件そのものが残っていません。

ここでイメージしたいのは、物件を持つかどうかで、賃料を払う側と受け取る側が入れ替わるという点です。

もちろん、ゲームと現実の投資を同じようには考えられません。


ただし「現金を持つのは損」と言い切るのは危険です

ここでひとつ補足させてください。

「現金を持っているのは損」という言い方が独り歩きすると、話が乱暴になります。

現金には、不動産のように現金化に時間がかかる資産とは違う役割があります。

修理費や医療費のような突発的な支出に、売却を待たずに対応できることです。

資産は価値があっても、必要なタイミングですぐ現金に変えられるとは限りません。

不動産であればなおさらです。

金融の世界で緊急予備資金が繰り返し勧められるのは、このためです。

後で説明するとおり、資産を担保に借りる方法もありますが、必要なときに必ず使えるとは限りません。

融資枠は市場環境や信用状況によって縮められたり止められたりすることがあり、手元の現金と同じものではありません。

急な支出に備える資金は、借入枠とは分けて考えておくほうが安全です。


視点2:使い道だけでなく、金利と返済計画まで見る

借り入れには、良い借金と悪い借金がある、という言い方をよく耳にします。

最初の分かれ目は、借りたお金を何に使うかです。

ただし、使い道だけで判断できるわけではなく、金利や返済計画も含めて考える必要があります。

投資・消費・浪費という3つの分類

お金の使い道は、大きく3つに分けて考えると整理しやすくなります。

  • 投資:将来の収入や値上がりを期待して、株式や不動産などにお金を充てる使い方
  • 消費:電気・ガス・水道や食費など、生活に必要で避けられない支出
  • 浪費:予算や目的から見て、使いすぎてしまった支出

趣味や娯楽そのものを否定する意味ではありません。

ここでは、借り入れの使い道を考えるための整理として分けています。

このうち、借りたお金を投資に回す場合は、資産を増やせる可能性が出てきます。

ただし、借りて資産を買えば、資産と同時に負債も増えます。

30万ドルを借りて30万ドルの物件を買っただけでは、その時点で負債を差し引いた純資産が30万ドル増えたわけではありません。

利息や諸費用を負担したうえで収益を得られるか、値下がりや収入減があっても返済を続けられるか。

使い道だけでなく、費用や返済の見通しまで確認したうえで、無理のない借り入れかどうかを判断することになります。

一方、生活費の不足を借り入れで補い続け、収支が改善しないままだと、返済の負担が積み重なっていきます。

家計の使い道を投資・消費・浪費に分けて整理する

金利の違いで、返済の負担は変わります

借り入れの負担は、使い道だけでなく金利によっても大きく変わります。

住宅ローンとクレジットカードを比べると、その差がはっきりします。

借り入れの種類金利の目安出典・時点
30年固定の住宅ローン年6.76%Freddie Mac の週次平均(2026年9月10日公表)
クレジットカード(調査対象銀行の全口座平均)年20.94%米連邦準備制度理事会 G.19(2026年第2四半期)

集計対象も時点も異なる統計による参考値です。

住宅ローンの数値は自宅の購入向けのもので、実際に適用される金利は借入条件によって異なります。

同じ「借金」でも、負担はここまで違います。

年20%を超えるような高金利のカード残高を持ち越すと、返済が長引くほど利息の負担が重くなります。

高金利の借り入れが長く続くほど、貯蓄やほかの支出に回せる余裕は小さくなっていきます。

逆に言えば、借り入れに前向きでいられる背景には、担保があるおかげで比較的低い金利で借りられる立場にいることもあります。

ただし、無担保の高金利ローンで同じやり方を使う場合は、借入条件の違いを考慮する必要があります。

金利の数値は市場環境によって変動しますので、実際に検討される際は最新の条件をご確認ください。


視点3:資産は「売る」だけでなく「担保にする」ことができます

ここまで読んで、「資産に換えてしまったら、急にお金が必要になったときに困るのでは」と思われたかもしれません。

実は、ここがこの話のいちばん重要な部分です。

不動産や証券などの資産は、金融機関などの審査を受けて、借り入れの担保にできる場合があります。

持っている資産を売らずに、資金を用意する道があるということです。

住宅のエクイティを活用して借りる方法

アメリカには、住宅のエクイティを活用して借りる方法があります。

エクイティとは、住宅の現在の評価額から、その住宅を担保とするローン残高を差し引いた持ち分のことです。

値上がりだけでなく、頭金や元本の返済によっても増えていきます。

ここでは、2つの方法を紹介します。

ひとつはキャッシュアウト・リファイナンスです。

既存の住宅ローンをより大きな金額のローンに借り換え、元のローンの返済などに充てた残りを現金で受け取る方法です。

借りられる上限や、物件を保有している期間などの条件は、金融機関やローンの種類によって決まります。

借り換えに伴う諸費用もあわせて確認しておきたいところです。

見落としやすいのは、追加で受け取る分だけでなく、既存の残高を含めたローン全体に、借り換え後の金利が適用される点です。

いまのローンの金利が低い方にとっては、ここが大きな判断材料になります。

もうひとつがHELOC(ホーム・エクイティ・ライン・オブ・クレジット)です。

住宅を担保に借入枠を設け、決められた期間のあいだ、その範囲で必要な分だけ借りる仕組みです。

借りられる金額は、住宅の評価額や既存のローン残高、返済能力などによって異なります。

一般に変動金利のため、金利の変動で返済額が変わることがあります。

いずれも住宅を担保にする借り入れですから、返済ができなくなれば住宅を失うおそれがあります。

視点1でも触れたとおり、借入枠は急な出費に備えた手元の現金の代わりになるものではありません。

なお、住宅を担保に借りたお金の利子が税務上どう扱われるかは、その資金を何に使ったかによって変わります。

条件は細かく、ご自身の状況によって結論も変わりますので、必ず税務の専門家にご確認ください。

株式を売らずに資金を調達するという発想

保有資産の値動きを確認する

担保になるのは不動産だけではありません。

米国の証券担保融資のひとつに、SBLOCと呼ばれる借入枠があります。

保有している証券を担保に資金を借りられる仕組みで、借りられる金額は、証券の種類や価格の変動しやすさ、金融機関の審査によって異なります。

ここで押さえておきたい制限があります。

SBLOCで借りたお金は、証券の購入や取引には使えません。

証券を買うためのマージンローンとは別の仕組みです。

この方法の特徴は、証券を売らずに資金を用意できる点にあります。

ただし、受け取るのは売却代金ではなく借入金です。

資産を持ち続けられる代わりに、利息と返済の負担が生じます。

さらに、担保の価値が不足すると、追加の担保や返済を求められ、対応できなければ担保にしている証券が売却されるおそれがあります。

売却によって利益が出た場合は、税金が生じることもあります。

担保不足とは別に、貸し手から返済を求められる場合もあります。

実行を検討される場合は、契約条件を確認したうえで、税理士やファイナンシャルアドバイザーにご相談ください。


視点4:借入額と資産価値のバランスを LTV で確認する

借り入れを活用する場合でも、無制限に借りられるわけではありません。

実際には、借入残高と資産価値のバランスを確認しながら上限を決めることになります。

その物差しになるのが LTV(Loan to Value/ローン・トゥ・バリュー)です。


計算はとても単純です

LTV は、資産の評価額に対して借入残高がどれくらいあるかを示す割合です。

消費者金融保護局(CFPB)も、住宅ローンの金額と物件の鑑定評価額を比べた指標として説明しており、融資の可否や住宅ローン保険の要否を判断する材料になるとしています。

計算式は「借入残高 ÷ 資産評価額」だけです。

評価額100万ドルの物件に50万ドルのローンが残っていれば LTV は50%、80万ドル残っていれば80%になります。

100万ドルの家、残債50万ドルの場合

具体的に見てみます。

評価額100万ドルの物件を持っていて、ローン残高が50万ドルだとします。

借入額の上限を評価額の80%とすると上限額は80万ドルですから、計算上の差額は30万ドルです。

ただし、実際に借りられる金額は審査によって決まり、手元に受け取る金額は諸費用によっても変わります。

この余力を、次の物件の頭金に充てたり、投資機会が現れたときの原資に使ったりする方がいます。

いま持っている資産を手放さずに、別の資産の購入資金に充てる形です。

ただし、保有資産が増えることと、負債を差し引いた純資産が増えることは別です。

そして自分の資産価値を把握するための材料も、アメリカでは比較的手に入りやすくなっています。

不動産のおおよその市場価値をオンラインで確認できるサービスが普及しており、残高との差を大まかに見ておくことができます。

ただし、こうした推定値はあくまで参考値です。

融資の審査で使われるのは金融機関が採用する評価額のほうで、オンラインの推定値がそのまま通るわけではありません。

LTVに余裕を持たせる意味と、それだけでは測れないリスク

アメリカの住宅と資産価値のイメージ

ここは補足しておきたい点です。

LTV に余裕を持たせる意味は、売却時に利益を残すためだけではありません。

不動産価格が下がったときに、破綻せずに持ちこたえるためという側面のほうが大きいと感じています。

LTV 80%ということは、評価額が20%下がると借入残高と資産価値がほぼ並ぶということです。

ここを超えて下落すると、売却代金だけでは完済できず、売ることも借り換えることも難しくなります。

20%の余白は「そこまで下がっても安心」という意味ではなく、売却にかかる費用を考える前に持ち分がほぼ消える水準だと考えたほうが実態に近いです。

そして、担保価値が下がったときの扱いは、借り入れの種類によって異なります。

ここは分けて理解しておいてください。

一般に、通常の住宅ローンは、返済を続けている限り、価格が下がったこと自体を理由に追加担保や一括返済を求められる形にはなっていません。

問題になるのは主に、売却や借り換えができなくなることです。

一方 HELOC では、通貨監督庁(OCC)の案内にあるとおり、住宅の価値が大きく下がったと判断されれば、追加の引き出しを止められたり枠を減らされたりすることがあります。

どれくらいの余裕が必要かは、資産の値動きや契約条件によって変わります。

「評価額の20%を残しておけば安心」と考えるのではなく、値下がりしたときに契約上どうなるのか、返済に充てられる資金が手元にあるかを確認しておくほうが実用的です。

LTV と残高を把握しておく意味は、攻めるためというより、下振れしたときに選択肢を残しておくためです。

ここが「借金に積極的」という言葉から受ける印象と、実際の行動でいちばん食い違うところかもしれません。


最後に確認しておきたい3つのポイント

ここまでの内容から、実際に判断するときに確認したい点を3つ挙げます。

1つめは、「借金=悪」でもなければ「借金=正解」でもないということです。

同じ方法が、誰にとっても適しているわけではありません。

収入が安定していない時期や、担保になる資産がない段階では、返済の負担が大きくなるおそれがあります。

収入の安定性や手元資金、借入条件を踏まえて、ご自身の状況に合うかを確認してみてください。

2つめは、税制の条件を確認せずに動かないことです。

「アメリカでは利息が控除できる」という話は広く知られていますが、実際には借入額の上限や資金の使い道によって扱いが変わります。

ご自身のケースについては、必ず税務の専門家にご確認ください。

3つめは、預金も「将来どの通貨で使うか」で考えておくことです。

アメリカでの生活費に充てる予定のお金を円で持っていれば、円安になったときに交換できるドルが減ります。

逆に、日本で使う予定の資金を円で持っておくことには、その支出に備える意味があります。

何もしないことがリスクゼロとは限らない、という視点は持っておいて損はないと思います。


現場から見えること:車の持ち方にも同じ発想が出ます

この考え方は、資産運用の話に限りません。

私たちが日々お客様と接している車の分野でも、同じ判断が働く場面があります。

車がないと生活が回らない西海岸の住宅街

アメリカに来たばかりの時期は、クレジットヒストリーがまだ積み上がっておらず、条件の良いローンを組みにくい状況になりがちです。

一方で、お住まいの地域や通勤先によっては、車がないと生活も仕事も回りませんから、購入を先送りすればよいとも限りません。

ここで確認したいのが、ローン金利が高い場合の負担です。

毎月の支払額だけでなく、完済までに払う総額まで見ておく必要があります。

すぐに購入するほかに、レンタカーやリースで一定期間だけ車を確保し、生活の見通しが立ってから購入を検討するという方法もあります。

短期の滞在であればレンタカー、数か月から2年程度であればサブスクやリースが選択肢になります。

どちらが合うかは、利用期間と総費用によって変わります。

利用料や維持費、購入した場合の売却額まで含めて、同じ利用期間で比べてみてください。

アメリカでの生活を始める時期、車をどう持つか迷われている方へ

クレジットヒストリーがまだ十分でない段階でも、利用しやすい選択肢があります。

1か月以上の滞在で車が必要な方にはサブスクプラン、長期滞在が決まっている方には解約違約金のないフレックスリースをご用意しています。

駐在員の方や、社用車をお探しの法人のお客様には、新車を3年間利用できるBizカーリースという選択肢もあります。

なお、フレックスリースは途中解約の違約金はかかりませんが、初期費用の払い戻しはありません。

条件は各サービスのページでご確認ください。


まとめ

ここまでの内容をまとめると、借り入れを考えるときに確認したいのは次の4点です。

  • 生活費や急な支出に備える現金を、どの程度残すか
  • 借りたお金の使い道に対して、金利や返済額に無理がないか
  • 資産を担保に借りる場合、どのような条件や制限があるか
  • 資産価格が下がったり収入が減ったりしても、返済を続けられるか

借り入れは、資産を手に入れる時期を早めたり、持っている資産を売らずに資金を用意したりするための手段です。

ただし、借りたお金で資産を買えば、負債も同時に増えます。

大切なのは、使い道だけでなく、金利や諸費用、毎月の返済額、そして収入が減ったり資産価格が下がったりしたときの余力まで確認することです。

「借りられる金額」と「無理なく返し続けられる金額」は、分けて考える必要があります。

まずはご自身の資産と負債を書き出して、比率を出してみるところからで十分です。

数字が見えるようになると、次に何をすべきかも見えてきます。

情報確認について

本記事は2026年9月確認時点で、Freddie Mac の週次住宅ローン金利平均、米連邦準備制度理事会の統計(G.19)、消費者金融保護局(CFPB)、通貨監督庁(OCC)の公開情報を主要な参照元として作成しています。

金利・融資条件・税制上の取り扱いは変更される可能性があり、適用される条件は個人の状況によって異なります。

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、税務・投資に関する助言ではありません。

実際のご判断にあたっては、最新の公式情報をご確認のうえ、税理士・ファイナンシャルアドバイザー等の専門家にご相談ください。

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